ブレーキの焼き入れ方法

どうもこんにちは。

レーシングドライバーの小林崇志です。

今日はブレーキの焼き入れについてお話ししたいと思いますのでよろしくお願いします。

 

 

焼き入れとは?

そもそも焼き入れって何?と思う方もいらっしゃるかと思います。

焼き入れとは新品のローターやパッドでサーキットを全開走行する前に、徐々に熱を入れていく作業の事を言います。

 

ローターの場合

この焼き入れという作業、ローターで言えば金属内部をならして歪まないようにするために行います。サーキット走行をするとローター温度は500度を超えることも珍しくありません。レーシングカーでは更に高温になりローターが赤くなる事もあります。

そんな高温になるローターですがいきなりフルブレーキングを行い高温にしてしまうとローター内部に温度差が出来てしまって歪む時があります。

所謂ジャダーが出ている、という状況ですね。

で、そうならないように徐々に熱を入れてあげて歪まないようにしてあげようというのがローターの焼き入れです。

パッドの場合

パッドの場合は熱を入れる、という意味合いもあるのですが、パッドの成分をローターに染み込ませるというような意味合いもあります。

実はブレーキを使っていくとローターの表面にパッドの成分が被膜となってくっついていきます。

そうすることでブレーキの効きが良くなったり効きが安定するようになるんです。

なのでローターが新品の時や違うパッドに変更した場合は新たに被膜を作り直さなければなりません。

またローターはそのままでパッドを同じ種類の新品にする場合もローター表面の凸凹にパッドがなじむまで当たり付けを行わないといけません。

 

焼き入れの仕方

さて、ここからは実際にどのような運転をして焼きを入れていけば良いのかお話ししたいと思います。

まず大前提として急激に温度を上げない、という事が大事になってきます。

 

ここで言う急激な温度上昇とは急ブレーキの事です。

強い踏力でいきなりブレーキを踏むとローター等の温度はあっという間に上がってしまい歪みの原因になってしまいます。

なのでコースイン直後などは特に慎重にブレーキ操作をされることをおすすめします。

それでは実際にコースインしたつもりで説明していきたいと思います。

ローターの場合

コースイン

まずピットロードを出てコースインするわけですが、ローターパッド共に新品の場合ブレーキは全然効きません。

そのためスロットルを全開にして1コーナーへ向かっていくと思いのほかブレーキが効かず、思わず強くブレーキを踏んでしまう可能性があります。

そうすると急激な温度上昇を起こしてしまうので、そうならないように最初はアクセルもほどほどに踏んでいきましょう。

焼き入れ初期

さて、1コーナー手前までやってきました。

ここでのブレーキの踏み方はローターにパッドの表面を軽く当てる程度で構いません。

つまりとても弱いブレーキです。

そのとても弱いブレーキでも止まれるようにブレーキはかなり早めに踏み始めてください。

そのようなブレーキを数回繰り返していると効きが強くなってくるのでそしたら次のステップです。

当たりがついてから

ブレーキの効きが良くなった=パッドの成分がローターに付着し出したという事なのでここから徐々にブレーキの踏力を上げていきます。

コーナー毎に踏力を上げていくイメージです。

国際コース等では3~5周ほどかけて徐々に徐々に踏力を上げていき、最終的に90%くらいの踏力まで上げていくと良いと思います。

仕上げ

ある程度ローターの温度を上げたら最後の仕上げです。

方法は2通りで、そのまま100%の踏力まで上げてしまうか一度ピットへ戻りローターを十分冷ましてから次の走行で100%まで上げるかです。

実際のレースでは悠長にローターを冷ましている時間など無いので3~5周したらもう全開にしてしまいます。

いきなり全開コースでは途中ジャダーが出ることも多いのですが殆どの場合ピットで休ませるとなおる場合が多いです。

一度ピットインコースでは再スタートの際に最初の1周くらいは少し丁寧にブレーキを踏んであげるといいでしょう。

そこから90%の踏力に上げた後1,2周で100%まで踏力を上げていき焼き入れは完了です。

パッドの場合

パッドの当たり付けは比較的簡単です。

コースイン時はやはりブレーキが効かない場合が多いので早め弱めのブレーキを心がけてください。

そこからしばらくするとブレーキが効きだすので1,2周かけて最大踏力までもっていくイメージで構いません。

ブレーキパッドはそこまでの難易度ではないので失敗も少ないのではないでしょうか。

注意点

さて、ここからが本題です。

焼き入れをするときに僕が注意しているポイントが二つあるのでお伝えします。

まっすぐブレーキを踏む事

これは当たり付け初期限定なのですが、読んで字のごとく出来るだけハンドルはまっすぐでブレーキを踏んでください。

理由はハンドルを切っていると内輪差でローターの回転数が変わり左右の温度上昇が変わってしまう事と、ABSなどが介入し余計な温度上昇を招いてしまう可能性があるからです。

出来るだけブレーキだけに集中して焼き入れしてくださいという事です。

その際後方にはよく注意してブレーキングするようにしてくださいね。

追突されてしまってはかないませんから。

ある程度当たりがついてきたら普通に踏んでも大丈夫です。

ブレーキを絶対に踏み足さない事

そしてこれ!

本日一番皆さんに覚えていってほしいポイントです。

最重要項目です。

ブレーキを踏み足さない事とはつまり、最初にブレーキを踏みだした時の踏力以上にブレーキング後半で踏力を上げないという事です。

例えばまだブレーキの当たりが付いていなくて効きが弱いときに思ったほど制動力が出なくて曲がれそうになかった場合、思わずブレーキをより強く踏み足してしまう場合があるかと思います。

これが一番ダメなブレーキの踏み方です。

何故ダメか説明すると、ブレーキという物はブレーキを踏むと温度が上がりますよね。

ブレーキの温度と踏力は比例するので強く踏めば温度は上がります。

そしてこの温度上昇にはタイムラグがあるので踏み始めた瞬間はそれほど温度は上がっていません。

なので最初に強い踏力で踏み、そこからブレーキを緩めていくような踏み方だとタイムラグによって上昇してきた時にはすでに踏力は少なくなっておりローター温度をそれほど上げずに済みます。

しかしブレーキング後半でブレーキを踏み足すと遅れて熱くなってきたローターへ更に熱を加える事になってしまいブレーキの温度はかなり上がってしまいます。

そうするとローターの歪みなどにつながってしまうんです。

これは焼き入れ時だけではなく全開走行時のフルブレーキングでも同様です。

もし焼きを入れてるのにローターが歪んだりパッドがフェードを起こしてしまう方はブレーキを奥で踏み足していませんか?

このブレーキを奥で踏み足さないという事は非常に重要なポイントです。

これが守られてないとここまでの内容が全部吹っ飛んでしまうくらい重要なのでしっかり意識してブレーキを踏んでみて下さい。

2回目の走行時はどうするの?

一度焼き入れを行った後の走行では殆ど気にする必要はありません。

しかしコースイン直後に急激にブレーキ温度を上げてしまうと歪んでしまう可能性もあるのでマシンの暖気も含めて最初の1周目は優しくブレーキを踏んであげましょう。

最後に

S660でローターの焼き入れをしている時の車載映像を取っていたのでYouTubeにアップしようと思います。

と、思っていましたが、車載映像を確認するとデータが壊れていて途中から音声のみの悲しい動画となっていたので今回は出来ません笑

いつかちゃんと撮ってアップしようと思うのでその時は参考にしてください。

 

それではまた! 

 

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